お母さんとわたし
母親に言われて、悪い意味で忘れられない言葉がいくつかある。
「あなたが小さい頃は、私とあなたは両想いだった」
「今は私の片思い」
「あなたが幼稚園くらいの頃が一番可愛かった」
要は、私にとって社会=家族だった頃、私にお母さんしかいなかった頃の関係に戻りたくてしょうがないということなんだろう。
昔から過保護で過干渉な親だった。
教育熱心な親によくあるスパルタ的な厳しさではなく、主に交友関係を制限される厳しさだった。
幼い頃はそれこそ狭い社会で生きていたのでそれほど気にはならなかったけれど、大学に入って一気に交友の幅、行動の幅が広がってから母に依存されていることに気がついた。
友だちと遊びに行くと嫌な顔をされる。
外食が続くと無視される。
外泊、オールはもってのほか。
相手が彼氏だと機嫌の悪さ×2。
みんなが楽しそうに遊んでいる中ひとりで帰ることも多く、わりと辛かった。
でも、大学の頃はまだ母に「わかってほしい」という気持ちがあった。
「私のママに対する愛は全然変わってないよ。
昔と変わらず大好きだよ。
ただ、成長するに従って家族以外のコミュニティが増えただけ。
家族に割く時間は減ったけど、愛情は変わらないままだよ」
と泣きながら訴えたことが何度もある。
何度も何度もケンカしてその度にわかってほしくて訴えて、でも何回言ってもわかってはくれなかった。
そうしたらだんだんわかってもらおうとするのに疲れてきてしまって、社会人になる頃には完全に諦めていた。
私、家族に信用されてないんだな。
こうやって物理的に繋ぎ止めておかなきゃ安心できないくらいの絆なんだな。
そう思うようになった。
だからお金貯めてさっさと家を出て今に至る。
親から離れた生活はまじでサイコーだ。
好きなときに好きなことを好きなだけできる。
お金はたまらないし家事もめんどくさかったけど、この自由と比べたらそんなのどうでもいい。
と、かなり一人暮らしを謳歌していた。
でも、人間慣れてしまうんだよね、自由に。
今度は月に1度くらいの頻度で実家に帰らなきゃいけないのが苦痛になってきた。
「早く帰ってこいなんで帰ってこないんだどういうつもりなんだ」と責め立てられ、帰ったら帰ったで「なんでもっと早く来なかったこれからはもっと頻繁に帰ってこい」と詰められ、相変わらず親の呪縛は続いていくようだ。
あと何十年この生活が続くんだろう。
あと何十年親に気を遣って生きていくんだろう。
あと何十年生きるんだろう…。
とまで考えて、ハッなんて最低な考えを…!
と自己嫌悪に陥る。
毎日顔合わせなきゃならないあの生活に比べたら100万倍マシなのにね。
もっと遠くに住みたいな。
頻繁に帰れないところ。
東京とか、大阪とか。
理想は海外だけど。
親孝行しない子どもでごめんね。
でも、私の人生だから。
私は、私を幸せにしたいから。